2021.02.09 17:06書記バートルビーまったくの虚無状態に陥り次第に何もしなくなっていくバートルビー。そんな男と相対した人間の、戸惑い、苛立ち、同情、疑い、諦め、保身、親切心、寂寥といった心の機微が書かれる。「しない方がいいと思います」。どんな要望もそう返され、静かに無視される。精神病について多少の予備知識のあるつもりの私達も、結局語り手と似たような経過しか辿れないだろう。完全に閉じてしまった人に対して、他の人間ができることなど皆無だ。関係の無力さ、断絶について考えさせられる。傍役の助手たちのキャラが立っていて序盤にコミカルさを与えている。単なる精神病者バートルビーの経過(悪化)、という単純な読み取りでは、物語の素晴らしさを損なってしまう。亡霊のような/透明人間のようなバートルビー。自分に...